鼻柱挙上術(下がって見える鼻柱を上げる手術)は、原因に合わせて鼻中隔の先端を短くする、内側の軟骨を整える、縫い寄せるといった方法の組み合わせで、多くの例に対応できると教科書に記されています[1]。ただし効果を数字で追った研究は少なく、閉鎖法の鼻の手術を受けた97人のうち術前に鼻柱の下がりがあった7人が12か月後には全員解消していた、という報告が数少ない実測です[2]。
「下がっている」の基準はどこ?
鼻柱の下がりには、横顔での測り方があります。教科書では、鼻の穴の長軸を通る線が、小鼻の縁と鼻柱の下面の距離をちょうど二等分するのが正常な関係とされ、この距離が増えていれば鼻柱の下がり、減っていれば鼻柱の引っ込みと判定します[3]。数値では、鼻の穴の下半分の距離が2mmを超えて増えていれば鼻柱の下がりを示すとされています[3]。
見た目の特徴も定義されています。小鼻の縁に対して鼻柱が下がりすぎ、鼻が長く見え、横から鼻柱の内側と膜性中隔(鼻の穴のあいだの柔らかい壁)が見える状態が鼻柱の下がりです[1]。「横顔で鼻の穴の中が見える」という悩みは、この定義に当てはまることが多い症状です。
何が原因で、何を直す?
原因は主に3つで、直す場所もそれで決まります。尾側鼻中隔(鼻中隔の先端側)の突出による下がりは、切除、回転、またはその両方で直せると教科書にあります[4]。多くの例は、鼻中隔の短縮、内側脚(鼻柱の中にある軟骨の脚)のトリミング、縫合法の組み合わせで対応でき、どれを選ぶかは内側脚と尾側鼻中隔の関係で決まり、それは手術中の観察で明らかになるとされています[1]。
732人の閉鎖法の鼻の手術を調べた研究では、鼻柱の下がりは尾側鼻中隔の切除不足、内側脚の凸型の形、軟部組織の変形に関係していました[5]。つまり「下がって見える」という同じ悩みでも、削る場所は人によって違います。
本当に上がる?研究の結果
数は少ないものの、上がったことを写真で確かめた報告があります。2022年に閉鎖法の鼻の手術を受けた97人を後ろ向きに調べた研究では、全員に通常の鼻先の処置を行い、膜性中隔の切除は誰にも行いませんでした[2]。術前後12か月の横顔写真を標準化して調べたところ、術前に鼻柱の下がりがあった7人は、術後に下がりも引っ込みも見られませんでした[2]。著者らは、適切な例では膜性中隔を切らなくても別の手技で鼻柱の下がりを直せると結論しています[2]。
縫合で固定する方法の効果を示す報告もあります。先の732人の研究では、鼻先の軟骨を尾側鼻中隔に縫い付けて高さと向きを出す縫合を系統的に行うようになってから、鼻柱の下がりはほとんど見られなくなったと述べられています[5]。ただしこれは修正手術の要因を調べた研究の一部の記述で、鼻柱の下がりだけを主な評価項目にした前向き研究ではありません[5]。
再発や逆の変形はなぜ起きる?
戻る理由は、原因に対して処置が足りないことです。尾側鼻中隔の切除不足や内側脚の凸型の形が残れば、下がりは残ります[5]。逆に距離が減りすぎれば鼻柱の引っ込みになるため、切る量は正常な関係の範囲に収める必要があります[3]。修正手術の率は文献上5%から15%で、この研究では8.6%でした[5]。
鼻先の手術と一緒に考えるべき理由
鼻柱の下がりは、鼻先の手術の前提になります。教科書は、低い鼻先に十分な高さを出すには先に鼻柱の下がりを直すことが前提で、軟骨を上に載せるだけでは下がりが悪化し、鼻先の高さが失われることがあると注意しています[6]。小鼻の引き上がりを伴う場合は、先に鼻柱を直してから小鼻の引き上がりの本当の程度を評価する順番が勧められています[1]。
鼻柱の下がりと小鼻の引き上がりを同時に直す皮弁の方法も報告されていますが、1人の患者の報告で、実現できることを示した段階です[7]。同時手術を勧められたときは、その方法の実績がどの程度あるかを聞いてみてください。
診察で確認したいこと
1つ目は、横顔で鼻柱と小鼻の縁の距離がどれだけ増えているかです[3]。2つ目は、原因が鼻中隔、内側脚、軟部組織のどれかです[1][5]。3つ目は、鼻先の高さを同時に変える計画があるかです[6]。4つ目は、小鼻の引き上がりがあるか、あるならどの順番で直すかです[1]。5つ目は、修正が必要になる可能性とその対応です[5]。
鼻中隔の長さ、内側脚の形、皮膚の厚さ、鼻先の高さで設計は変わります。だから記事だけでは、自分の鼻でどこを直すかは決められません。診察では、横顔での距離の計測、鼻の中の観察、鼻先と小鼻の状態を確認し、切る場所と縫う場所を一緒に整理してもらってください。
- 1Suh MK. Atlas of Asian Rhinoplasty. 2018. Correction of Columellar Deformities(鼻柱の下がりは、小鼻の縁に対して鼻柱が下がりすぎ、鼻が長く見え、横から鼻柱の内側と膜性中隔が見える状態。多くは鼻中隔の短縮、内側脚のトリミング、縫合法の組み合わせで対応できる。小鼻の引き上がりを伴う場合は先に鼻柱を直してから小鼻の引き上がりの程度を評価する。方針は内側脚と尾側鼻中隔の関係で決まり、手術中の観察で明らかになる)
- 2Erdal AI, İsmail BK, Şibar S. Role of Membranous Septum in the Alar-Columellar Relationship: Strategies in Closed-Approach Rhinoplasty. Facial Plastic Surgery. 2025. doi:10.1055/a-2338-0701
- 3Suh MK. Atlas of Asian Rhinoplasty. 2018. Nasal Analysis / Chapter 13: Correction of Alar-Columellar Disproportion(鼻の穴の長軸を通る線が小鼻の縁と鼻柱の下面の距離を二等分するのが正常。この距離が増えていれば鼻柱の下がり、減っていれば鼻柱の引っ込み。鼻の穴の下半分の距離が 2mm を超えて増えていれば鼻柱の下がりを示す)
- 4Daniel RK. Rhinoplasty: An Atlas of Surgical Techniques. 2018. Aesthetics (extrinsic)(尾側鼻中隔の突出による鼻柱の下がりは、切除、回転、またはその両方で直せる)
- 5Bouaoud J, Loustau M, Belloc JB. Functional and Aesthetic Factors Associated with Revision of Rhinoplasty. Plastic and Reconstructive Surgery Global Open. 2018. doi:10.1097/GOX.0000000000001884
- 6Suh MK. Atlas of Asian Rhinoplasty. 2018. Secondary Tip and Columella Surgery(低い鼻先に十分な高さを出すには、先に鼻柱の下がりを直すことが前提になる。軟骨を上に載せるだけでは鼻柱の下がりが悪化し、鼻先の高さが失われることがある)
- 7Wen L, Deng X, Wang L. Simultaneous Correction of Hanging Columella and Alar Rim Retraction Using a Columellar Lateral Wall Composite Pedicle Flap: A Patient Report. The Journal of Craniofacial Surgery. 2026. doi:10.1097/SCS.0000000000013171