鼻孔縁下降術でノッチ(段差状のへこみ)や後戻りにつながりやすいのは、軟骨や皮膚を切除しすぎて支えを失わせることです。この施術名そのものの合併症率を調べた専用の研究は見当たらず、逆方向の変形(鼻孔縁が上がってしまう状態)を治す手術の知見から、起こりやすい仕組みを整理します。
この施術の専用データは少なく、逆方向の知見から考える
鼻孔縁下降術そのもののノッチや後戻りの頻度を専用に調べた研究は、今回参照した範囲では見当たりませんでした。ただし、鼻孔縁が上方に後退してしまう変形(alar retraction)を治す手術についての報告は複数あり、これらは「なぜ下降術がノッチや後戻りにつながりやすいか」を考えるヒントになります。
軟骨や皮膚を切除しすぎると、逆方向に形が動く
以前の鼻の手術で鼻翼の軟骨や前庭の皮膚を切除しすぎると、軟骨が弱くなって上方に後退し、鼻翼と鼻柱の境目が変形すると報告されています[1]。鼻孔縁下降術は逆方向、つまり鼻孔縁を下げる操作をする手術です。同じように軟部組織を切除しすぎたり軟骨の支えを失わせたりすれば、ノッチやいびつな輪郭、あるいは時間の経過とともに元の位置に戻ろうとする後戻りが起こりうると考えられます。
外側の軟骨を削りすぎると、呼吸のしにくさにもつながる
外側の鼻翼軟骨(lateral crura)を切除しすぎたり位置がずれたりすると、鼻の外側の弁(external nasal valve)が虚脱し、呼吸のしにくさという機能的な問題も起こりうるとされています[1]。見た目の変化だけでなく、呼吸への影響も確認しておきたいポイントです。
過剰な切除は、鼻孔縁下降術に限った問題ではない
鼻の手術全般において、切除しすぎることは多くの合併症の原因になるとまとめられています[2]。鼻孔縁下降術も切除・移動を伴う手術である以上、同じ落とし穴を共有していると考えられます。
後戻りしたときの修正方法はいくつかある
鼻孔縁が後退した状態を治す方法として、外側の軟骨を移植で補強する方法[1]や、皮膚だけを扱う外側V-Y形成術[3]、軟骨移植による鼻孔縁グラフト[4]などが報告されています。逆方向の後戻りが起きた場合も、こうした軟骨による支え直しが選択肢になる可能性があります。
軟骨の支えがあるかどうかが、長期的な安定性を左右する
鼻孔縁グラフトについてのまとめでは、軟骨移植による支えの有無が、後退や凹みの是正、鼻孔の形の長期的な安定性を左右する要因として位置づけられています[4]。皮膚の切除や移動だけに頼る方法は、瘢痕が縮む過程で形が変化しやすいと考えられます。
診察で確認しておきたいこと
1つ目は、下降させる量に対して、軟骨の支えを足すかどうかです[1][4]。2つ目は、外側の軟骨をどの程度扱うかで、呼吸への影響がないかです[1]。3つ目は、後戻りが起きた場合にどの修正方法が選べるかです[1][3][4]。この施術名そのものの合併症率を示すデータがない以上、こうした個別のポイントを診察で具体的に確認することが重要です[2]。
- 1Marianetti TM, Moretti A. Correction of Alar Rim Retraction by Lateral Crural Extension Graft. Acta Otorhinolaryngologica Italica. 2020. doi:10.14639/0392-100X-N0382
- 2Moritz E, Asaria J. When Reductive Rhinoplasty Goes Wrong and How to Make It Right. Facial Plastic Surgery. 2025. doi:10.1055/a-2577-2805
- 3Lai LY, Hsu HC. The Single Application of External V-Y Plasty in Correcting Alar Retraction. Journal of Cosmetic Dermatology. 2025. doi:10.1111/jocd.70242
- 4Totonchi A, Guyuron B. Alar Rim Deformities. Clinics in Plastic Surgery. 2016. doi:10.1016/j.cps.2015.09.014