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コラム
「鼻が伸びた?」は気のせいじゃない──鼻先が下がる原因は3本の靭帯だった
2026.03.09
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20代の頃の写真と、今の自分を見比べてみてください。鼻、長くなっていませんか?
それ、気のせいではありません。鼻先は加齢とともに確実に下がります。原因は骨でも脂肪でもなく、鼻先を宙に支えている「3本の靭帯」が緩むから。しかもこの変化、過去の整形手術が引き金になっていることもあります。
この記事を読んだらわかるポイント
- 鼻先を空中に支えている「Pitanguy靭帯」「Scroll靭帯」の正体
- 加齢・過去の手術・遺伝──鼻先が下がる3つの原因
- 軟骨グラフトと靭帯再建で鼻先を持ち上げる最新手術アプローチ
鼻先を支える「支持構造」を知ろう
鼻先が下がる原因を理解するためには、まず「私たちの鼻先がどのようにしてその位置を保っているのか」を知る必要があります。

鼻先は宙に浮いている?土台となる軟骨と靭帯

鼻の付け根(目と目の間)を触ってみてください。硬い骨があるのがわかると思います(鼻骨)。しかし、そこから下に向かって鼻先を触ってみると、コリコリとした弾力のある組織に変わりますよね。実は、鼻の半分から下、特に「鼻先(鼻尖)」には骨がありません。鼻先は「下外側軟骨(鼻翼軟骨)」と呼ばれる、蝶が羽を広げたような形をした一対の軟骨によって形作られています。
骨の土台がない鼻先が、なぜペチャンコに潰れずに形を保っていられるのでしょうか?それは、複数の軟骨と、それらを繋ぎ合わせる「靭帯(じんたい:骨や軟骨同士を繋ぐ丈夫な線維組織)」が、まるでテントの支柱やロープのように鼻先を引っ張り合い、空中に浮かせるようにして支えているからです。美容医療の世界では、これを「Tip support(ティップ・サポート:鼻尖の支持構造)」と呼びます。
重要な「Pitanguy靭帯」と「Scroll靭帯」の役割

鼻先のテント構造を支えるロープ(靭帯)の中でも、特に重要な役割を果たしているのが「Pitanguy靭帯(ピタンギ靭帯)」と「Scroll靭帯(スクロール靭帯)」です。
Pitanguy靭帯は、ブラジルの著名な形成外科医であるIvo Pitanguy医師にちなんで名付けられた靭帯で、鼻の皮膚の下にあるSMAS(スマス:表在性筋膜という顔の筋肉を覆う膜)が厚くなったもので形成されています。この靭帯は、左右の軟骨のドーム(鼻先の最も高い部分)の間を通り、鼻の奥にある骨の突起(前鼻棘)へと繋がっています。軟骨の間で「クッション」のように働き、鼻先を前方に押し出す(高さを出す)と同時に、鼻先を上向きに保つのを助ける役割です。
Scroll靭帯は、鼻先を作る「下外側軟骨(鼻翼軟骨)」と、その上にある「上外側軟骨」をしっかりと繋ぎ合わせる役割を持っています。この靭帯があるおかげで、鼻の側面の構造が安定し、息を吸い込んだときに鼻の横がペコッと凹むのを防いだり、鼻先が垂れ下がるのを防いだりしています。
なぜ鼻先は下がるのか?3つの主な原因
加齢によるコラーゲン減少と靭帯のゆるみ
最も身近で避けられない原因が「加齢(エイジング)」です。年齢を重ねると、皮膚や組織の弾力を保つコラーゲンやエラスチンが減少します。これは顔の皮膚だけでなく、鼻先を支えている靭帯(Pitanguy靭帯やScroll靭帯など)にも当てはまります。靭帯がコラーゲンを失って弾力を無くし、緩んで伸びてしまうと、テントのロープが緩んだのと同じ状態になります。
また、顔の骨格の変化(上顎の骨が痩せて後退するなど)も影響し、鼻の土台そのものが弱くなることで、重力に逆らえなくなった鼻先が徐々に下へと垂れ下がってしまうのです。
過去の手術が支持構造を傷つけている可能性
過去に鼻の整形手術を受けたことがある場合、それが鼻先の下垂の原因になっている可能性があります。支持構造への配慮が不十分な手術では、鼻を小さくするために軟骨を過剰に切り取ってしまうことがありました。土台となる軟骨を削りすぎると、鼻先を支える力が失われ、術後数年かけて鼻先が沈み込んでしまいます。
さらに大きな問題は「靭帯の切断」です。過去の多くの手術では、Pitanguy靭帯やScroll靭帯は切断されたまま放置されていました。テントの重要なロープを切ったまま放置すれば、時間が経つにつれて確実に鼻先は崩れ、下垂していきます。
遺伝的な軟骨の強度の違い
もともとの「遺伝的な体質」も大きく関与します。一般的に、欧米人に比べてアジア人の鼻は「軟骨が薄くて小さく、柔らかい」という特徴があります。もともとテントの支柱(軟骨)が細くて柔らかい上に、上から覆いかぶさるテントの布(皮膚)が分厚くて重いため、支柱がその重みに耐えきれません。このような遺伝的な特徴を持つ方は、若いうちから鼻先が丸く下向きになりやすく、加齢による靭帯の緩みが加わると、さらに顕著に鼻先の下垂が進行しやすくなります。
鼻先の下垂を改善する方法
軟骨グラフトで物理的な「つっかえ棒」を作る
鼻先の下垂を根本から改善するために、よく用いられるのが「コルメラ・ストラット(鼻柱支柱グラフト)」や「鼻中隔延長グラフト」という技術です。これらは、患者さん自身の体から採取した軟骨(耳の軟骨、鼻の中の鼻中隔軟骨、あるいは肋骨の軟骨など)を適切なサイズに切り出し、鼻先の左右の軟骨の間に挟み込むようにして縫い付けます。

特に「鼻中隔延長グラフト」は、鼻の奥にある固定された丈夫な軟骨(鼻中隔軟骨)に新しい軟骨を継ぎ足し、そこへ鼻先の軟骨を縫い付けて固定する強力な手法です。これにより、物理的で頑丈な「つっかえ棒」が完成し、重力や皮膚の重みに負けない、高く上向きな鼻先をしっかりとキープできるようになります。
靭帯を再構築する最新の「保存的鼻整形」
近年世界の鼻整形医の間でトレンドとなっているのが、「Preservation Rhinoplasty(保存的鼻整形)」という画期的な考え方です。これは、「元々ある大切な組織(軟骨や靭帯)は極力壊さずに保存する」、あるいは「手術の過程でどうしても切断しなければならなかった靭帯は、手術の最後に必ず元通りに縫い合わせて再構築する」というアプローチです。
過去の手術では切りっぱなしにされていたPitanguy靭帯やScroll靭帯を、手術の終盤で緻密に縫い合わせます。最新の研究でも、靭帯の修復を行うことで、皮膚の下の余分な隙間が減り、術後の腫れが早く引く効果があることが示されています。さらに、靭帯の再構築と軟骨グラフトを組み合わせることで、皮膚が新しい骨組みにピタッと綺麗に張り付き、術後に鼻先が再び下がってしまうのを防ぐ「最も予測可能で安全な結果」が得られると結論づけられています。
この記事のまとめ
- 鼻先は軟骨と靭帯の「吊り橋構造」で支えられている:鼻先には骨がなく、下外側軟骨やPitanguy靭帯・Scroll靭帯などがテントのように鼻先を空中に支えています。
- 加齢や過去の手術が下垂の原因になる:年齢によるコラーゲンの減少で靭帯が緩んだり、過去の手術で靭帯が切断されたり軟骨が削られすぎたりすると、鼻先を支えきれず垂れ下がります。
- アジア人は遺伝的に鼻先が下がりやすい傾向がある:もともと軟骨が弱く、皮膚が厚い傾向があるため、支える力が重力に負けやすいという特徴があります。
- 「つっかえ棒」となる軟骨グラフトが有効:自身の軟骨を用いた鼻中隔延長やコルメラ・ストラットにより、物理的に強力な支柱を作り、鼻先を持ち上げます。
- 最新トレンドは「靭帯の再構築(保存的鼻整形)」:切断されたPitanguy靭帯やScroll靭帯を丁寧に縫い合わせて修復することで、長期間にわたり自然で美しい鼻先を維持することが可能になっています。
気になることがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
当院では、患者様一人ひとりに合わせた施術プランをご提案しています。詳しくは施術メニュー一覧をご覧ください。また、コラム一覧では、他の美容に関する最新情報もお届けしています。
参考文献
- Çakır B, Genç B, Finocchi V, et al. My Approach to Preservation Rhinoplasty. Facial Plastic Surgery Clinics of North America. 2023 (DOI)
- Barone M, Salzillo R, De Bernardis R, et al. Reconstruction of Scroll and Pitanguy’s Ligaments in Open Rhinoplasty: A Controlled Randomized Study. Aesthetic Plastic Surgery. 2024 (DOI)
- Burstein F. Prevention and Correction of Airway Compromise in Rhinoplasty. Annals of Plastic Surgery. 2008 (DOI)
- Daniel R, Palhazi P, Gerbault O, et al. Rhinoplasty: The Lateral Crura–Alar Ring. Aesthetic Surgery Journal. 2014 (DOI)

この記事を書いた人
中村 宏光 医師
Zetith Beauty Clinic 銀座・大阪・福岡
日本国内および国際学会での研究発表実績を持ち、Zetith Beauty Clinic全体の技術指導・教育にも携わる。解剖学的根拠に基づいた精密な鼻整形を専門とし、一人ひとりの骨格や組織に合わせた自然な仕上がりを追求している。
