コグ(糸に付いた返し)を3次元に配した新しい糸が、前の世代より長持ちすると裏づける確かな比較データは、まだありません[1]。6か月まで追った前向きの研究でしわの評価が改善したという報告はありますが、他の糸と直接比べた試験ではありません[1]。期待の置きどころは「半年ほどの短い改善」までにしておくのが、いまの文献に沿った読み方です[2]。
3次元にコグを置くと、何が変わる?
糸が組織をつかむ面が増えて、力が偏りにくくなる、というのが設計の考え方です。研究で使われた糸は、コグを120度、240度、360度の向きに円周状に配して、片側で引っかけながら反対側の組織を持ち上げる形になっています[1]。この配置なら前の世代より結果が長持ちするかもしれない、という予備的な報告はあります[1]。ただし同じ論文が、それを裏づける確かな比較データは不足していると書いています[1]。
6か月の前向き研究は、何を測った?
しわの重さと、全体の改善度です。中顔面とほうれい線を対象にした前向き研究では、施術前と1か月、3か月、6か月の時点で、しわの重症度スケールと全体改善度スケールの評価が行われました[1]。6か月まで、しわの評価は下がったまま保たれたと報告されています[1]。見ておきたいのは、これが他社の糸や別のデザインと比べた試験ではないことです。1種類の糸の成績を丁寧に記録した研究です[1]。
追跡が6か月で終わっている点も大切です。12か月より先に何が残るのかを、この研究は答えていません[1]。
写真で測った研究では、糸はどう出た?
見た目の評価だけでなく、写真で測った比較もあります。日本人143人の写真を、座った姿勢と寝た姿勢で比べた研究では、正面から見た組織の動きが、何もしていない群で20.8%、超音波(HIFU)の群で20.7%、糸リフトの群で14.1%でした[3]。糸リフトの群だけ動きが有意に小さく、超音波の群では差が出ていません[3]。たるみの評価は座った姿勢で見るべきだ、という指摘もこの研究から出ています[3]。
ただしこの研究にも限界が書かれています。使った糸の本数や種類が医師ごとにばらばらで揃っておらず、過去に受けた糸リフトの詳しい記録も欠けているため、結論というより傾向だと著者自身が述べています[3]。
世代間の比較データは、なぜ足りない?
研究の型がそろっていないからです。糸リフトの研究は後ろ向きや記述的なものが多く、少人数の症例集積に基づくものも多いこと、手技と結果の報告方法にばらつきが大きいことが指摘されています[1]。系統的レビューでも、症例数の少なさ、観察期間の短さ、客観的な評価指標の欠如が同じように挙げられています[4]。U字型とI字型のような形の違いについては整理が進んでいますが、3次元コグだけを取り出して他と比べた客観的データを新しく出したものではありません[5]。
乳房のスレッドリフトをまとめたレビューは、この領域の限界をはっきり書いています。糸による引き上げはおもに短期の見た目の改善であって、永続的な効果と同じもののように示すのは適切でない、という趣旨です[2]。顔でも読み方は変わりません。
限界を踏まえて、診察で確かめること
確かめたいのは3つです。この糸で見込んでいる期間は何か月か、その根拠になっている研究は何を何か月まで測ったものか、そして戻ってきたときに次はどうする想定か。「新しい構造だから長持ちする」という説明だけで止まるなら、もう一段くわしく聞いてみてください。
研究が弱い領域だからこそ、医師が限界まで含めて話せるかどうかが判断材料になります。自分の顔でどこまで見込めるかは、たるみの程度や皮膚の厚みを診察で見てもらってはじめて具体的になります。
- 1Park BY. Prospective Study of Three-Dimensional Bi-directional Barbed Threads for Midface and Nasolabial Fold Rejuvenation. Aesthetic Plastic Surgery. 2026. doi:10.1007/s00266-025-05327-4
- 2Bogdan RG, Helgiu A, Bloancă V, Ichim C, Todor SB, Iliescu-Glaja M, Domnariu HP, Leonte E, Crăiniceanu Z, Anderco P. The Rise and Refinement of Breast Thread Lifting: A Contemporary Review. Journal of Clinical Medicine. 2025. doi:10.3390/jcm14113863
- 3Nakao T, Matsui C, Okumura T, Tachibana K, Ishikawa N, Wynn ET, Mon LY, Thein YC, Mizuno H. Posture-based Assessment: Thread Lift Versus High-intensity Focused Ultrasound in Asians. Plastic and Reconstructive Surgery Global Open. 2025. doi:10.1097/GOX.0000000000007197
- 4Gülbitti HA, Colebunders B, Pirayesh A, Bertossi D, van der Lei B. Thread-Lift Sutures: Still in the Lift? A Systematic Review of the Literature. Plastic and Reconstructive Surgery. 2018. doi:10.1097/PRS.0000000000004101
- 5Hong GW, Wan J, Yoon SE, Wong S, Yi KH. Pre- and Post-Procedural Considerations and Thread Types for Thread Lifting. Life. 2025. doi:10.3390/life15010085