ピーリングの薬は、どの深さまで働くかで大きく2つに分かれます。グリコール酸やサリチル酸などの浅いピーリングは刺激が少なめで、TCA(トリクロロ酢酸)は濃度を上げると深くまで届くぶん、色素沈着などのリスクも増えます[1][2][3]。どれが合うかは、ニキビか肝斑か小じわかという悩みと、肌の色の濃さで変わります。
浅いピーリングとTCA、何が違う?
違いは、薬が届く深さです。浅いピーリングには、低い濃度のグリコール酸、サリチル酸、ジェスナー液、10〜20%のTCAなどが使われます[1]。
TCAは濃度を上げると、皮膚の深い層まで働く中くらいの深さのピーリングになります[2]。日焼けによる肌の老化をまとめた研究では、低い濃度は浅い日焼けのダメージに、高い濃度はしわに効果が報告されています[2]。副作用が出ても、多くは数週間でおさまっていました[2]。
ニキビには、どのピーリングが向く?
ニキビでは、グリコール酸やサリチル酸の浅いピーリングが使われます。アメリカの皮膚科のガイドラインでは、白ニキビや黒ニキビに少し改善が見込めるとされる一方、何回も通う必要があり、効果は長く続かないと書かれています[4]。
日本のガイドラインでも、グリコール酸やサリチル酸マクロゴールのピーリングは、標準の治療が使えないときの選択肢という位置づけです[5]。ニキビあとのへこみにTCAや高い濃度のグリコール酸を使うことは、すすめられていません[5]。どちらも保険のきかない治療です[5]。
肝斑やくすみには、どのピーリングが向く?
肝斑では、浅いピーリングのほうが合う場合が多いと考えられています。色の濃い肌の人を対象にした研究のまとめでは、グリコール酸はTCAより肝斑を改善し、副作用も少なめでした[3]。
40人に、グリコール酸とTCAのピーリングを順番に行った報告もあります[6]。一時的な色素沈着は、グリコール酸のあとで12.5%、TCAのあとで32.5%でした[6]。治療をやめて12週までに、70%で肝斑がまた出ていました[6]。
この報告はアフリカの濃い肌の人が対象で、日本人の肌にそのまま当てはまるとは限りません。それでも、ピーリングだけで肝斑が終わるわけではないことは、知っておきたい点です。
色素沈着が心配な人は、何に気をつける?
肌の色が濃めの人ほど、深いピーリングに慎重になります。ピーリングやレーザーは、とくに色の濃い肌で、色が濃くなったり抜けたりすることがあります[7]。色の濃い肌、ケロイドやヘルペスになったことがある人は、ピーリングに注意が要るとされています[1]。
グリコール酸のピーリングと美白の塗り薬を組み合わせると、ニキビあとの色素沈着が早く引くことがあります[8]。ただしピーリングの炎症で、かえって色が濃くなることもあります[8]。日焼けが続いている時期は、とくに注意したい点です。
自分に合うピーリングは、どう決める?
決めるときは、次の3つを順番に考えます。
悩み:ニキビ、肝斑やくすみ、小じわのどれか[4][3][2]
肌:色の濃さ、敏感さ、ケロイドやヘルペスになったことがあるか[1]
続け方:何回通えるか、ほかの塗り薬と組み合わせるか[4][8]
マッサージピール(PRX-T33)のような商品名のついた薬は、今回調べた範囲では、ほかのピーリングと同じ条件で比べた研究が見つかりませんでした。使う薬の中身と、どのくらいの深さに働くのかを説明してもらいましょう。
診察では、どこを確かめる?
どのピーリングが合うかは、記事だけでは決められません。ニキビや肝斑の種類、肌の色や敏感さは、実際に見ないと分からないからです。
診察では、使う薬と濃さ、通う回数、色素沈着が出たときの対応、ほかに使っている塗り薬との組み合わせを確かめておきましょう。
- 1Cummings Otolaryngology, 7th ed. Vol. 1, Chapter 22: Chemical Peel Agents(浅いピーリング剤は低濃度グリコール酸、10〜20% TCA、ジェスナー液、トレチノイン、5-FU、サリチル酸。フィッツパトリック IV〜VI の肌、ケロイド・ヘルペスの既往は相対的禁忌).
- 2Sitohang IBS, Legiawati L, Suseno LS, Safira FD. Trichloroacetic Acid Peeling for Treating Photoaging: A Systematic Review. Dermatology Research and Practice. 2021. doi:10.1155/2021/3085670
- 3Dorgham NA, Hegazy RA, Sharobim AK, Dorgham DA. Efficacy and tolerability of chemical peeling as a single agent for melasma in dark-skinned patients: A systematic review and meta-analysis of comparative trials. Journal of Cosmetic Dermatology. 2020. doi:10.1111/jocd.13725
- 4Zaenglein AL, Pathy AL, Schlosser BJ, Alikhan A, Baldwin HE, et al. Guidelines of care for the management of acne vulgaris. Journal of the American Academy of Dermatology. 2016. doi:10.1016/j.jaad.2015.12.037
- 5日本皮膚科学会. 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023(グリコール酸・サリチル酸マクロゴールによるピーリングは標準治療が使えない場合の選択肢[推奨度C1]、萎縮性瘢痕へのTCA・高濃度グリコール酸ピーリングは推奨しない[C2]、いずれも保険適用外).
- 6Maruma F, Dlova N, Mofokeng TRP, Ngwenya E. The effects and safety of sequential high concentration glycolic acid and trichloroacetic acid chemical peels in skin photo-type IV–VI, a retrospective cross-sectional monocentric review. International Journal of Women's Dermatology. 2025. doi:10.1097/JW9.0000000000000209
- 7Bolognia Dermatology, 5th ed. Chapter 67 Disorders of Hyperpigmentation(サリチル酸・グリコール酸ピーリングやレーザーは、とくに色の濃い肌で色素沈着や色素脱失を起こしうる).
- 8日本皮膚科学会. ケミカルピーリングガイドライン(グリコール酸ピーリングと美白剤の併用は炎症後色素沈着の改善を早めうるが、ピーリングの炎症で色素沈着が強まることもある).