リップリフトは、鼻の下の皮膚を切り取って縫い縮め、鼻から上唇までの距離(人中)を短くする手術です。上唇が上へ持ち上がるため、赤い唇の見える面積が増え、口を閉じたときの前歯の見え方も変わります[1][2]。効果は長く続きますが、鼻の下に傷が残ることは避けられず、傷の見え方が満足を分けます[3][4]。
鼻の下で、何をしている?
鼻柱と鼻翼の付け根に沿って、牛の角のような形(ブルホーン型)に皮膚を切り取り、縫い合わせます。教科書では、鼻の下から口ひげ状あるいは牛の角状の皮膚を切除し、閉じることで唇を短くしつつ上と前へ巻き上げるしくみだと説明されています[1]。最も広く行われているのがこの型で、鼻の付け根で皮膚を切り取って上唇を上へ進める手術だと総説にまとめられています[2]。皮膚を切る量が唇の山(キューピッドボウ)の上がり具合を決め、筋肉を切る量が前歯の見え方を決めると報告されています[5]。
人中は、どれくらい短くなる?
報告では、平均で5ミリ近く短くなっています。20人を6か月追った研究では、上唇の高さが平均21.80ミリから16.95ミリになり、赤い唇の厚みは2.10ミリから5.65ミリに増えました[6]。口を閉じたときの前歯の見え方も、0.25ミリから2.00ミリに変わっています[6]。ただしこれは、人中が男性で24ミリ以上、女性で22ミリ以上と長い方を選んだ研究で、切り取る量は人によって決めるものです[6]。
教科書では、手術後に残す人中は最低10〜15ミリが目安とされています[1]。同時に、この数字は一つの目安にすぎず、歯の見え方や唇の厚み、顔全体の釣り合いを合わせて決めるべきだとも書かれています[1]。
向く人、向かない人は?
向くのは、人中が長く、唇が薄く見え、前歯があまり見えない方です[2]。年齢で人中が伸びた方だけでなく、若い方が短い人中を望んで受けることも多く、アジアではその傾向があると報告されています[5][7]。
向かないのは、人中が十分に長くない方です。教科書は、縦の余裕がない唇に行うと前歯が見えすぎて口が閉じにくくなるおそれがあるとして、禁忌に挙げています[1]。上あごが前に出ている、縦に長いなど骨格に原因がある方は、皮膚の手術だけでは前歯の見え方が不自然になることがあり、骨格の診断を先に受けるべきだと報告されています[5]。
傷はどこに、どう残る?
傷は、鼻の穴の付け根の縁に沿って残ります。手術のシステマティックレビューでは、外科的な方法は注入や糸より効果が長く続く一方、傷が残ることは避けられないと結論づけられています[3]。傷を目立たせないために、教科書は切開線を細かい曲線と先細りで丁寧にデザインすることを求め、鼻の下に単純な弧を描くだけの切開は見た目を悪くすると警告しています[1]。
皮膚の自然なくぼみに沿った小さな切開と、引っ張りの少ない縫い方で、傷の評価点が1週間後の5.10点から3か月後の2.40点に改善したという報告もあります[6]。この傷の評価は13点満点で、0が傷なしです[6]。
不満はどこから生まれる?
不満の中心は傷です。手術後に不満を書き込んだ25人の投稿を分析した研究では、60%が傷に関する不満で、鼻の穴や鼻翼の形のゆがみが6人、唇の左右差が5人でした[4]。この研究は不満のある投稿だけを集めたもので、全体の割合を示すものではありませんが、何が起こりうるかを知る材料になります[4]。
従来型の手術と、鼻と唇を吊り上げる糸を組み合わせた変法を比べた報告では、変法のほうが「とても良くなった」と答えた割合が高く、傷の問題を減らす狙いが示されています[8]。ただし、一人の術者による自身の方法の報告です[8]。
診察で、何を測ってもらえばいい?
測ってほしいのは、人中の長さ、口を閉じたときの前歯の見え方、唇の厚み、そして骨格です。皮膚をどれだけ切るかは、残す人中の長さと前歯の見え方から逆算して決まります[1][5]。骨格に原因がある場合は、唇の手術だけでは釣り合いが取れないため、骨格の診断を先に受けることが勧められています[5]。
傷の位置とデザイン、過去にケロイドや傷が盛り上がった経験があるかも、診察で伝えておくべき事項です。切る量が足りなければ物足りず、多すぎれば戻せません。どの長さを目標にするかを、医師と数字で共有しておくと安心につながります。
- 1Cosmetic Facial Surgery, 2nd ed. Chapter 11. Cosmetic Lip Surgery.
- 2Cano Palacios FJ. Comprehensive Review of Lip Lifting Techniques for Perioral Rejuvenation: Indications, Surgical Approaches, and Outcomes. International Journal of Medical Science and Clinical Research Studies. 2025. doi:10.47191/ijmscrs/v5-i08-20
- 3Zhao H, Wang X, Qiao Z, Yang K. Different Techniques and Quantitative Measurements in Upper Lip Lift: A Systematic Review. Aesthetic Plastic Surgery. 2023. doi:10.1007/s00266-023-03302-5
- 4Hayat J, Alfadhly A, Jafar AB. Patient-Reported Dissatisfaction After Lip Lift: Insights From a Thematic Analysis of RealSelf Reviews. Aesthetic Surgery Journal Open Forum. 2025. doi:10.1093/asjof/ojaf129
- 5Hattori Y, Uda H, Omori M, Mashiko T, Sugawara Y. Integrating Orthognathic Surgery Into Lip Lift for Subnasal Aesthetics. Plastic and Reconstructive Surgery Global Open. 2025. doi:10.1097/GOX.0000000000007230
- 6Nohily Y, Khalil A, ElHussein S, Albash Z, Almohammad G. Modified Upper Lip Lift Technique: A Clinical Study to Evaluate Esthetic, Functional, and Scar Quality. The Open Dentistry Journal. 2026. doi:10.2174/0118742106422665260115074056
- 7Neligan PC (ed). Plastic Surgery, 5th ed. Vol.2 Aesthetic. Ch.9-13 若年患者における口唇短縮術の位置づけ.
- 8Mahmood BJ. The Tri-Lift suspension technique: a modified deep-plane lip lift for enhanced aesthetic outcomes—my personal approach. Maxillofacial Plastic and Reconstructive Surgery. 2025. doi:10.1186/s40902-025-00459-8