「2年もつ糸」と言われたら。説明で見きわめる4つの点

糸が体に残る年数と、引き上がって見える期間は別のものです。111,948件の日本の集計では糸リフトの効果の持ちはおよそ6〜12か月で、宣伝でうたわれる12〜18か月と査読データの間にはずれがあると前向き研究の著者も指摘しています。

糸が体に残る年数と、引き上がって見える期間は別のものです[1]。111,948件の日本の集計では糸リフトの効果の持ちはおよそ6〜12か月で、宣伝でうたわれる12〜18か月と査読データの間にはずれがあると前向き研究の著者も指摘しています[1][2]。「2年」という数字を聞いたら、それが吸収期間の話か効果の話か、そして何を根拠にした数字かを確かめてください。

その「2年」は、溶ける期間? 効果の期間?

まず聞き分けたいのは、この点です。PCLの糸が2年残ってコラーゲンを長く作らせる、という記述は、動物実験を紹介する論文の背景説明に出てきます[3]。PCLと乳酸の共重合体の糸では、コラーゲンを作らせる性質から効果が18か月を超えて続いたという臨床報告も、別の論文の導入部で引かれています[4]。

実際の顔で効果が見えている期間は、それより短く報告されています。日本の大規模集計では素材と部位でおよそ6〜12か月、PCLの糸は12か月ほど残ると書かれています[1]。糸が溶けたあとの引き上げの持続については、さらに研究が必要だと専門家の合意文書も明記しています[5]。

研究では、いつごろ戻り始める?

半年前後で、戻りが目立つ報告が多いです。3次元のコグ糸の前向き研究の考察では、たるみの戻りが6か月以内に半数で見られ8週で戻った例が14%あった過去の報告と、純粋な吊り上げの効果は6か月までに弱まるという報告が紹介されています[2]。同じ考察は、改善のピークがおおむね最初の6か月にあり、その後ゆるやかに下がると述べています[2]。

乳房の糸リフトをまとめたレビューも、効果は6〜12か月で下がり始め、1年を過ぎるとほとんどが元に近づくと書いています[6]。部位は違いますが、糸による引き上げが一時的なものだという見方は共通しています[6]。

ガイドラインは、どう位置づけている?

「一時的な改善」という位置づけです。日本美容外科学会のガイドラインは、顔のしわ・たるみへの糸リフトを、一時的な改善は期待できるが効果は大きくなく持続が短いため十分な説明が必要だとして、推奨度2(弱く推奨)にしています[7]。

説明のしかたにも注意が向けられています。一時的な効果を文脈なしに伝えたり、手術と同等の解決策のように示したりすることは、同意の質を損ない信頼を失わせうるとレビューは書き、結果が一時的であること、戻る可能性、繰り返しの必要を伝えるべきだと述べています[6]。

満足しにくいのは、どんな人?

年齢が高い方と、本数が多い方です。日本の1500人を調べた解析では、43歳以上であることと10本を超える糸を使ったことが、それぞれ独立して不満の予測因子でした[8]。ここでの不満とは、効果が足りないと感じて再受診したことを指します[8]。

素材のレビューも、高齢の患者さんへの糸リフトは慎重に行うべきで、長期の満足度が下がる可能性があると述べています[9]。年齢が上がるほど、持続の説明を丁寧に受ける価値があるということです。

説明で確認する4つの点

1つ目は、糸の素材名と吸収期間の根拠です。2つ目は、自分の顔で見込む効果の期間と、それが何の研究に基づくかです。3つ目は、起きうるトラブルと対応です。合併症のメタ解析は、短期症状、へこみや輪郭の乱れ、感覚の変化、感染や露出、周囲組織の損傷の5つの型を挙げています[10]。4つ目は、戻ったときの次の手です。

術者の経験も結果を左右します。中国では2014年に溶ける糸が、2018年にPCLと乳酸の糸が承認されましたが、医師の経験と技術の不足から比較的高い合併症率が観察されたという報告があります[11]。どのくらい手がけているかは、聞いてよい質問です。

診察で確かめること

4つの点を聞いたうえで、自分のたるみが糸で届く範囲かを、顔を見て判断してもらってください。「2年もつ」という言葉が自分の顔でどう置き換わるかを聞くのが、いちばん具体的な確認になります。

説明が数字だけで終わるなら、その数字の出どころを一段くわしく聞いてみてください。限界まで含めて話せる医師かどうかが、そのまま判断材料になります。

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