「小顔にしたい」という同じ希望でも、原因が脂肪なのか、骨なのか、筋肉なのかで打ち手はまったく変わります。合わない方法を選ぶと効果が出ないばかりか、後戻りできない変化を残すこともあります。
脂肪を減らす:バッカルファット除去
頬の内側にある脂肪体(Bichat 脂肪体)を一部取り除き、頬骨のラインを相対的に立たせる手術です。Moura らの系統的レビューでは、頬の丸みが主訴で骨格そのものは整っている人に適応があり、頬骨の視覚的な強調が得られると報告されています[1]。教科書的にも「選ばれた患者に対する精密な削り出し」と位置づけられます[2]。ただし注意点があります。近くを走る顔面神経頬筋枝の損傷[3]に加え、Zelken は施術後に生じる「buccal bulge(頬のふくらみ)変形」の診断と管理を論じており[4]、取りすぎは後年の頬こけにつながりうる、後戻りの難しい変化です。「若いうちに少し」ではなく、将来の顔のボリュームまで見越して量を決める必要があります。
筋肉を細くする/骨を削る
エラの張りが筋肉(咬筋)の肥大によるものなら、ボツリヌストキシン注射で筋肉の活動を抑え、数か月かけて細くする方法があります。可逆的で入院も要りませんが、効果を保つには反復が前提です。一方、エラや頬骨の骨格そのものが要因なら骨切り(下顎角形成・頬骨形成)が対象になります。効果は最も大きいのですが、Erdem らの10年・1095例の顎顔面手術の分析[5]や、術前計画に3Dシミュレーションを用いる Shalabi らのレビュー[6]が示すように、下歯槽神経との位置関係や左右対称性の管理が重要な、後戻りできない大きな手術です。なお、骨切りに特化した合併症発生率は本コーパスでも十分なデータが揃っておらず、その点は不確実性として正直にお伝えします。まずは「原因が脂肪・筋肉・骨のどれか」を診察で見極めることが出発点です。
- 1Moura LB, Spin JR, et al. Buccal fat pad removal to improve facial aesthetics: an established technique? Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2018. doi:10.4317/medoral.22449
- 2Neligan (textbook). Buccal fat reduction as precision facial contouring. Plastic Surgery.
- 3Wang J, Xie L, Zhang N, et al. Clinical Application of the High SMAS ... (buccal branch preservation). Plast Reconstr Surg Glob Open. 2025. doi:10.1097/GOX.0000000000006775
- 4Zelken JA. Diagnosis and Management of 'Buccal Bulge' Deformity After Facial Surgery. 2026. doi:10.1177/27325016251415502
- 5Erdem ME, Çoban G, Öztürk T, et al. Skeletal deformities and surgical procedures in orthognathic surgery (1095 cases). BMC Oral Health. 2025. doi:10.1186/s12903-025-07265-8
- 6Shalabi MM, Darwich K, et al. Virtual Surgical Planning in Maxillofacial Surgery. Clin Pract. 2025. doi:10.3390/clinpract15030062