脂肪注入は、採った脂肪をどう処理するかで種類が分かれます。コンデンスリッチ脂肪注入は、遠心分離などで脂肪の密度を高めた濃縮脂肪を使う考え方で、従来法やマイクロファット、ナノファットとは処理の目的が違います[1][2]。どれが向くかは、注入する部位と、生着(定着)のしやすさをどう見込むかで決まります。
そもそも脂肪注入の「処理」とは?
脂肪注入の基本は、脂肪を採る、余分な油や血液・麻酔液を取り除く、少量ずつ多くの層に分けて注ぐ、という流れです[1]。この「取り除く」工程のやり方が種類の分かれ目です。遠心分離で不要な成分を落とす従来法(コールマン法)が、処理の基本形として教科書に位置づけられています[1]。
従来法・マイクロファット・ナノファットは何が違う?
マイクロファットは、脂肪を細かい粒にして少量ずつ多くの通り道に注ぐ方法で、細胞を血流の近くに置いて定着を助ける狙いがあります。ナノファットは、さらに機械で細かくして、固形の粒をろ過で除き、成長因子や幹細胞を含む成分を血流の乏しい部位に使う方法です[2]。コンデンスリッチ脂肪注入は、これらとは別に、遠心などで脂肪や幹細胞の密度を高めた濃縮脂肪を使う考え方に近いです[2]。
生着率は処理法で本当に上がる?
「濃縮すれば必ず定着が良くなる」とまでは言えません。幹細胞が定着を助ける可能性は示唆されていますが、質の高い証拠はまだ十分でないと国内のガイドラインは述べています[3]。多血小板フィブリン(PRF)などを足して定着を助ける試みも報告されていますが、研究の段階です[4]。処理法だけで結果が決まるわけではない、と理解しておくのが安全です。
自分に合う処理法はどう選ぶ?
選び方の軸は、注入部位と目的です。顔のくぼみを自然に埋めたいのか、質感の改善が目的なのかで、細かい粒が向く場面と濃縮脂肪が向く場面が変わります[5]。顔への脂肪注入の効果と合併症をまとめたレビューもありますが、処理法どうしの優劣をはっきり結論づけた比較はまだ限られます[5]。
相談のときに確認したいこと
確認したいのは、どの処理法を使うのか、その処理でねらう効果と、定着が一定でない前提をどう説明してくれるかです[3]。定着には個人差があり、複数回に分けることもあります。医師に、部位と目的に合わせた処理法の理由と、想定される仕上がりの幅を聞いて、判断の材料にしてください。
- 1Kakagia D, Pallua N. Autologous Fat Grafting. Surgical Innovation. 2014. doi:10.1177/1553350613518846
- 2Arena A, Troise S, De Francesco F, ほか. Fat Graft as Regenerative Treatment of Facial Manifestations of Systemic Sclerosis: A Systematic Review. Wound Repair and Regeneration. 2025. doi:10.1111/wrr.70045
- 3日本形成外科学会(編). 形成外科診療ガイドライン1(2021年版). 乳房再建 CQ28 自家脂肪注入法の項.
- 4Yu P, Zhai Z, Lu H, ほか. Platelet-Rich Fibrin Improves Fat Graft Survival. Aesthetic Surgery Journal. 2020. doi:10.1093/asj/sjaa084
- 5Gornitsky J, Viezel-Mathieu A, Alnaif N, Azzi AJ, Gilardino MS. A systematic review of the effectiveness and complications of fat grafting in the facial region. JPRAS Open. 2018. doi:10.1016/j.jpra.2018.12.004