分かっているのは糸が体内で分解されるまでの期間で、見た目の変化がどれだけ続くかは別の問題です。11万件を超える多施設レビューでは一般的な吸収糸が6〜8か月、PCL(ポリカプロラクトン)の糸で12か月程度とされますが[1]、効果の持続を検証した無作為化比較試験は今回参照した資料では確認できませんでした[2][3]。
何が分かっている?——糸が分解されるまでの目安
素材ごとの分解の目安は、大規模な観察研究から示されています[1]。ただしこれは後ろ向きの研究で、著者ら自身がスレッドリフトを受ける集団は一般的な美容外科の患者集団と異なりうるという選択の偏りを認めています[1]。母集団が偏っていれば、そこから出た数字をそのまま自分に当てはめる根拠は弱くなります。
「糸が残る」と「引き上がって見える」は別
糸が残っている期間と、引き上がって見える期間は一致しません。超音波で糸の太さの経時変化を追った研究は、糸そのものの残り方を客観的に見る手段ですが、見た目の効果の持続を測ったものではありません[4]。分解の目安を、効果が続く期間の約束として読み替えることはできません。
系統的レビューは何を言っている?
スレッドリフトを対象にした系統的レビューは複数あります。2018年のレビューは吸収性・非吸収性のバーブ糸について有効性と合併症の両面を評価し[2]、2021年のメタ解析は合併症の頻度に主眼を置いています[3]。いずれも観察研究を統合したもので、エビデンスの水準としては中程度から低いところにとどまります。
「効いた」をどう測るかという課題
評価指標そのものが弱いという問題もあります。顔のリフト手術の分野では、結果は妥当性が検証された評価尺度で報告すべきとされ、非無作為化研究の質はMINORSの基準(比較研究で18点以上、非比較研究で12点以上)で評価することが勧められています[5]。低侵襲の顔の若返り治療では、主観的な引き上げ効果に対するエビデンスの確信度が低いと評価された例もあります[6]。
追跡期間のばらつきという壁
追跡の長さがそろっていないことも、結論を難しくしています。SMASを扱うフェイスリフトの系統的レビューでは、228か月に及ぶ長期の追跡がある一方で短期の研究も混在し、この差のために長期の有効性を確定しにくいと指摘されています[7]。糸の分解が終わる時期より先の予後は、スレッドリフトではさらに情報が乏しいのが現状です[1]。
この不確かさをどう使うか
確からしさが低いことは、受けない理由にも受ける理由にもなりません。自分で決められるのは、どれくらいの変化を、どれくらいの期間、どの回復期間と引き換えに受け入れるかという条件のほうです。診察では、前後の写真をいつどの条件で撮るか、効果が落ちたと感じたときに何を基準に判断するかを決めておくと、次の選択がしやすくなります。持続の見込みは、皮膚の状態とたるみの量を診たうえで医師が個別に説明します。
- 1Tamura T, Okumura K, Funakoshi Y, Teranishi H. Multicenter Review of More Than 110,000 Facial Thread Lifting Cases From a Cosmetic Surgery Group. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2025. doi:10.1097/GOX.0000000000007335
- 2Gülbitti HA, Colebunders B, Pirayesh A, Bertossi D, van der Lei B. Thread-Lift Sutures: Still in the Lift? A Systematic Review of the Literature. Plast Reconstr Surg. 2018. doi:10.1097/PRS.0000000000004101
- 3Niu Z, Zhang K, Yao W, et al. A Meta-Analysis and Systematic Review of the Incidences of Complications Following Facial Thread-Lifting. Aesthetic Plast Surg. 2021. doi:10.1007/s00266-021-02256-w
- 4Hügül H, Yıldız KA, Altunkalem RN, Aydın Z, Kutlubay Z. Variation of the Thread Thickness After Thread Lifting: An Ultrasonographic Evaluation. J Cosmet Dermatol. 2025. doi:10.1111/jocd.70250
- 5Facelift outcome の報告に関する推奨(validated instrument の使用、MINORS 基準). Aesthet Surg J. doi:10.1093/asj/sjag005
- 6Kumar N, Suh DH, Lee SJ, Ryu HJ. Radiofrequency-Based Treatments for Facial Rejuvenation: A Systematic Review of Efficacy, Safety, and Patient-Centered Outcomes. Aesthet Surg J Open Forum. 2025. doi:10.1093/asjof/ojaf159
- 7Hatan M, Alkilani N, Halawani IR, et al. Evolution of Superficial Muscular Aponeurotic System Facelift Techniques: A Comprehensive Systematic Review of Complications and Outcomes. JPRAS Open. 2024. doi:10.1016/j.jpra.2023.06.003