VASER脂肪吸引は、同じ人の体の左右で従来の脂肪吸引と比べた無作為化試験で、皮膚の縮みがよくなり、出血が減ることが確かめられています[1]。ただし痛み、腫れ、見た目、本人と医師の好みは、6か月の時点で差がありませんでした[1]。「効く」の中身は仕上がりの満足ではなく、皮膚と出血の2点だと考えるのが、いまの研究に合った期待値です。
「効く」と言える研究は、どんなもの?
中心にあるのは、20人を対象にした1本の試験です。複数の施設で、同じ人の体の片側をVASER、反対側を従来の吸引で行い、評価する人には方法を伏せて比べています[1]。同じ人のなかで比べるので、体質や生活習慣の違いが結果に混ざりにくい設計です。
脂肪吸引の根拠をまとめた2017年のレビューも、この試験をVASERの主な根拠として取り上げています[2]。一方で、2023年に専門医5人が4か月かけて意見をまとめた文書は、VASERは広く使われているのに公表されたガイドラインが乏しいと述べています[3]。つまり、効果の根拠はしっかりした試験が1本あり、その先はまだ経験に頼る部分が大きい、というのが現在地です。
皮膚の縮みは、どのくらい違う?
レビューの要約では、皮膚の縮みが6%よくなったと整理されています[2]。試験の著者らは、この差を統計的にも臨床的にも意味のある改善と位置づけています[1]。
ただし、たるみの強い部位は調べられていません。著者らは、男性の胸のふくらみや膝のように皮膚が余る部位は今後の課題だと書いています[1]。皮膚が大きく余っている人ほど、6%という数字をそのまま当てはめないほうが安全です。
出血は減る?
減ります。吸引した脂肪100ccあたりに含まれる血液が、従来法の14.0ccに対してVASER側では11.2ccで、26%少ないという結果でした[1]。
ただしレビューは、この差を100ccあたり3ccの小さな利点と表現しています[2]。少量の吸引ではほとんど体感しない差で、吸引量が多い手術ほど意味が出てくる数字です。
痛みや見た目の満足は、変わる?
試験では変わりませんでした。痛み、腫れ、見た目、本人と医師のどちらが好きかは、6か月の時点で従来法との差がありませんでした[1]。「VASERだから仕上がりに満足できる」という説明は、この試験の結果とは合いません。
満足に関わる要素として、デザインの方針を示す報告があります。超音波を使った脂肪吸引を受けた男性743人を年代ごとに追った報告では、平均満足度が59.3から73.8へ上がり、意味のある合併症は15.4%から4.6%へ減りました[4]。腹筋を強調する彫り込み型は初期の評価が高くても長く続かず、「作り物の腹筋」という不満につながりやすかったと述べられています[4]。
合併症は?体格や吸引量で変わる?
体格と吸引量は、合併症との関係を調べる指標になっています。VASERを行った単一施設の報告が、BMIと吸引した脂肪の量と術後の合併症との関連を検討しています[5]。
皮膚を切り取る手術と組み合わせた成績もあります。腹部のたるみ取りにVASERを併用した女性100人の前向き研究では、皮膚の壊死は1人もなく、局所の合併症は7%でした[6]。内訳は、体液のたまり2%、小さな血腫1%、軽い創の感染3%、傷の治りの遅れ1%です[6]。これは組み合わせ手術の数字なので、脂肪吸引だけの場合とは条件が違います。
診察で確認したい4つのこと
1つ目は、皮膚の縮みを期待する部位と、その部位に皮膚がどれだけ余っているかです[1]。2つ目は、自分のBMIと吸引予定量が、その施設の基準のどこに入るかです[5]。3つ目は、体液のたまりや血腫が起きたときの対応です[6]。4つ目は、輪郭を強調する方針か、自然な形を残す方針かです[4]。
皮膚の厚さや弾力、脂肪のつき方は人によって違います。記事の数字は集団の平均で、自分の体でどこまで縮むかを言い当てるものではありません。診察では、皮膚の余りと弾力を実際に診てもらい、VASERで得られる差がその部位で意味を持つかを一緒に確認してください。
- 1Nagy MW, Vanek PF. A Multicenter, Prospective, Randomized, Single-Blind, Controlled Clinical Trial Comparing VASER-Assisted Lipoplasty and Suction-Assisted Lipoplasty. Plastic and Reconstructive Surgery. 2012. doi:10.1097/PRS.0b013e3182442274
- 2Chia CT, Neinstein RM, Theodorou S. Evidence-Based Medicine: Liposuction. Plastic & Reconstructive Surgery. 2017. doi:10.1097/PRS.0000000000002859
- 3Ruff PG, Garcia O, Nykiel MJ, Galanis CJ. Consensus-based Recommendations for Vibration Amplification of Sound Energy at Resonance Ultrasound-assisted Liposuction. Plastic and Reconstructive Surgery Global Open. 2023. doi:10.1097/GOX.0000000000005110
- 4Celik N, Akgun Demir I, Kurt S, Keskin I. Real- vs High-Definition Ultrasound-Assisted Liposuction in Men: Long-Term Outcomes and the Role of Helium Plasma Skin Tightening. Aesthetic Surgery Journal Open Forum. 2025. doi:10.1093/asjof/ojaf157
- 5Lanzano G, Napoli F, Zannella T, Colucci R, Cantiello I, Scalera G. Correlation between BMI, amount of aspirated fat and post-operative complications in VASER liposuction: A single centre experience. JPRAS Open. 2024. doi:10.1016/j.jpra.2024.08.007
- 6Tuan HT, Lam VN, Duc NQ, Phuong NT, Van Phu N, Dien NB. VASER-Assisted Perforator-Preserving Liposuction in Full Abdominoplasty: A Prospective Study of 100 Cases. Aesthetic Plastic Surgery. 2026. doi:10.1007/s00266-026-05938-5