返しのある糸と、ない糸。仕上がりの何が変わる?

返し(コグ)の付いた糸と、つるっとした糸は役割が違います。つるっとした糸は主に肌のコラーゲンを増やす働きで、引き上げる力は限られると整理されています。

返し(コグ)の付いた糸と、つるっとした糸は役割が違います。つるっとした糸は主に肌のコラーゲンを増やす働きで、引き上げる力は限られると整理されています[1]。返しの付いた糸は組織をつかんで位置を動かす、つまり引き上げそのものが仕事です[1]。

返しは、何をしている?

組織に引っかかって、持ち上げた位置に留める役です。教科書では、返しの付いた糸を皮膚から刺し入れて顔や首の軟らかい組織を持ち上げる、負担の軽い手技として説明されています[2]。今の糸は返しの向きで大きく2つに分けられ、両方向に付けたものと、多方向に付けたものがあります[3]。この2つを組み合わせたときの固定力を測って比べた研究も出ています[3]。

つるっとした糸とは、どう使い分ける?

肌質を整えたいのか、位置を動かしたいのかで分かれます。つるっとした単線の糸はコラーゲンを新しく作らせて肌の質を上げますが、引き上げる力は限られます[1]。返しの付いた糸は、つかんで位置を戻す働きを担います[1]。たるみの改善を求めているのに前者だけを提案されたら、目的とずれていないか確かめてください。

太さや返しの大きさで、何が変わる?

扱える組織の重さが変わります。太くて返しの大きい糸は、下顔面の重く垂れた組織を持ち上げるのに向き、細くて返しの小さい糸は目のまわりのようなデリケートな部位に向くと整理されています[4]。同じ「糸リフト」でも、選ぶ糸が違えば別の施術に近いと考えたほうが分かりやすくなります。

PDOの糸は、溶けていく過程で軽い炎症の反応を起こし、線維芽細胞の働きを促してコラーゲンを新しく作らせるように設計されています[4]。その場の引き上げと、あとから出る肌の変化の両方を兼ねる形です[4]。

素材が違うと、どこが変わる?

溶ける速さと、肌への働きかけ方です。PDOは真皮のなかで働ける期間がおよそ6か月とされ[5]、PLLAは乳酸からできた素材でたるんだ部位にボリュームを足す性質があります[5]。PCLはいちばん新しい単線の糸で、老化させたラットの実験では真皮のコラーゲン密度を増やす効果がPDOやPLLAより高かったと報告されています[5]。動物実験の結果なので、人でそのまま同じとは限りません[5]。

コグ糸では足りないのは、どんな場合?

皮膚のあまりが多く、重いたるみが出ているときです。糸は皮膚を切り取らないので、余った皮膚そのものを減らすことはできません[2]。研究の質という面でも、症例数が少なく観察期間の短い報告が多く、客観的な評価指標が足りないと系統的レビューが指摘しています[6]。実際の使われ方も、単独ではなく他の治療と組み合わせる形が増えています[7]。

診察では、自分に使う予定の糸が返し付きなのか、太さと素材は何なのか、その組み合わせで何を狙うのかを聞いてください。たるみが皮膚のゆるみなのか、深い層の下がりなのかを分けて説明してもらえると、糸で足りるかどうかの見当がつきます。

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