切開フェイスリフトは、皮膚だけでなく、その下の膜(SMAS=表在性筋膜)をどう扱うかで、効果と持続、そして負担が変わります。SMASを畳んで縫い縮める方法、一部を切り取る方法、深い層まで剥がして引き上げる方法などがあり、たるみの程度に合わせて選びます[1]。深く扱うほど引き上げの効果は大きくなりやすい一方、神経への負担も見据えた設計が必要です[2]。どこまで踏み込むかが、術式の分かれ目です。
SMASとは何で、なぜ処理の仕方が重要?
SMAS(表在性筋膜)は、顔の皮膚の下にある膜と筋肉の層で、たるみを引き上げる土台になります[3]。皮膚だけを引っぱる方法は、この土台に手を入れないぶん効果が長続きしにくいとされます。実際に、皮膚のみ・SMASを畳む方法・SMASを広く剥がす方法で引き上げの力を比べた研究では、SMASを扱うほど効果が高まる傾向が示されています[4]。どの層まで扱うかが、仕上がりと持ちを左右します。
畳む・切る・深く剥がす、それぞれの違いは?
SMASの扱い方は大きく3系統です。畳んで縫い縮めるプリケーション、一部を切り取って縫い寄せるSMASectomy、そして深い層まで剥がして靭帯を解放するディーププレーンです[1]。ディーププレーンは、顔をつなぎとめる靭帯(リガメント)を十分に外すことで、ほうれい線まわりの改善に向くとされています[5]。一方、畳む方法は負担が比較的軽く、たるみが軽度から中等度の人に向くことがあります。
効果が長持ちするのはどれ?
深い層まで扱う術式ほど、引き上げの効果は大きく出やすい傾向があります[4]。ただし、持続の長さや満足度が術式によってはっきり差がつくかは、研究間で結論が完全には一致していません[6]。効果の大きさと、合併症や回復の負担は、いわばトレードオフの関係です。強い効果だけで選ばず、たるみの程度と許容できる負担のバランスで考えるのが現実的です。
合併症のリスクは術式で変わる?
顔のリフトで心配なのは、顔の動きをつかさどる神経の損傷と、血のたまり(血腫)です。異なるSMAS術式の合併症を比べたメタ分析では、術式ごとに合併症の起こりやすさに違いがあることが示されています[1]。神経損傷についても系統的な検討が行われ、多くは一時的とされますが、深い層を扱う術式では解剖への理解がいっそう重要になります[2]。器械の新しさより、その医師がどの層を安全に扱えるかが問われます。
自分に合う術式はどう選ぶ?
選び方の軸は、たるみの程度、ほうれい線や首まで直したいか、そして回復の負担をどこまで許容できるかです[4]。軽度から中等度なら畳む方法、しっかり引き上げたい・ほうれい線も改善したいなら、より深く扱う術式が候補になります[5]。SMASの扱いに決まった正解があるわけではなく、その人に合わせて畳む・切る・剥がすを使い分けるべきだとされています[1]。まず自分の優先順位を決めると、方法を絞りやすくなります。
決める前に診察で確認したいこと
見きわめたいのは、自分のたるみがどの層から来ているか、どこまで引き上げたいかです。診察では、すすめられた術式でどの層を扱うのか、期待できる効果と持続、そして神経損傷や血腫のリスクと対処まで確認してください。効果の強さと回復の負担はトレードオフなので、両方を並べて説明してくれる医師のほうが納得して選べます。強い効果を約束する言葉より、リスク説明の丁寧さを決め手にしてください。
- 1Jacono AA, Alemi AS, Russell JL. A Meta-Analysis of Complication Rates Among Different SMAS Facelift Techniques. Aesthetic Surgery Journal. 2019. doi:10.1093/asj/sjz045
- 2Gandra G, Silva BS, Horta R. Facelift Surgery and Nerve Injury: A Systematic Review and Meta-Analysis. Aesthetic Plastic Surgery. 2025. doi:10.1007/s00266-025-04932-7
- 3Weinzweig J. Plastic Surgery Secrets Plus, 2nd ed. Ch.77 Rhytidectomy(術式分類・SMAS flap).
- 4Rao V, Basta MN, Jehle CC, Crozier JW, Woo AS. Quantifying the Effective Lift of Skin-Only, SMAS Plication, and Extended SMAS Face-Lift Techniques in a Cadaveric Study. Plastic & Reconstructive Surgery. 2023. doi:10.1097/PRS.0000000000009834
- 5Flint PW, et al. Cummings Otolaryngology, 7th ed. Ch.23 Rhytidectomy(deep-plane / retaining ligaments).
- 6Chang S, Pusic AL, Rohrich RJ. A Systematic Review of Comparison of Efficacy and Complication Rates among Face-Lift Techniques. Plastic and Reconstructive Surgery. 2011. doi:10.1097/PRS.0b013e3181f95c08