ヒアルロン酸注入が向きやすいのは、しわや、頬・あごなどのボリューム不足を、手術ではなく注射で整えたい人です。日本美容外科学会の指針も、顔のしわへのヒアルロン酸注入は有効だとしたうえで、推奨度2(弱く推奨)としています[1]。一方で、妊娠中の人、感染や炎症がある人、自己免疫の病気がある人などは、慎重な判断が必要です。
どんな悩みに向いている?
米国で承認されている使い道には、ほうれい線などのしわ、口元の細かいしわ、唇・頬・あごのボリュームを補うことが含まれます[2]。
頬のボリューム不足、あごの後退、フェイスラインのぼやけに注入した研究では、19人の見た目のスコアがすぐに良くなり、全体として12か月まで保たれていました[3]。ただし1つの製品だけを使った小さな研究で、比べる相手のいない結果です。
ほかの注入剤と比べて、何が違う?
いちばんの違いは、あとから溶かせることです。ヒアルロン酸は、ヒアルロニダーゼという酵素ですぐに分解できます[4]。仕上がりが合わなかったときや、トラブルのときに戻せる道があります。
ヒアルロン酸以外の注入剤は溶かして取り除けないため、慎重に使うべきだと説明されています[4]。また、やわらかいタイプのヒアルロン酸は、細かいしわを整えるのに向くと説明されています[5]。
受ける前に、伝えておきたい体の状態は?
ある研究では、次の人は対象から外されていました。成分へのアレルギーがある人、免疫が弱っている人、血が止まりにくい病気の人、感染や炎症がある人、皮膚の病気がある人です[6]。6か月以内に顔の注入や美容手術を受けた人、妊娠中・授乳中の人も外されていました[6]。
これは研究に参加する条件で、そのまま全員に当てはまる禁止リストではありません。ただ、医師が慎重になる理由を知る手がかりになります。
注入から時間がたって出る反応については、専門家グループが目安をまとめています。活動中の自己免疫の病気や、最近の歯の治療は、遅れて出る反応の要因に挙げられています[7]。1型糖尿病は、よくコントロールされていて傷の治りが普通なら、受けられないわけではありません[7]。
ハチに刺されてアレルギーが出たことがある人は、溶かす薬にもアレルギーが出るおそれがあります[7]。ニキビや赤ら顔、皮膚炎があると肌のバリアが弱くなるため、これも先に伝えておきましょう[7]。
向かない使い方はある?
あります。胸を大きくする目的のヒアルロン酸注入は、日本美容外科学会の指針で「行わないことを強く推奨」とされています[1]。被膜拘縮(入れたものの周りが硬くなること)や、乳がん検診のじゃまになる可能性があるためです[1]。
顔でも、入れすぎには注意が必要です。かたいタイプを浅く入れたり、量が多すぎたりすると、むくんだような不自然な見た目になることがあります[4]。「足りない分だけ入れる」という考え方が、自然に見せるコツです。
副作用は、どのくらい気にすればいい?
多くは軽く、時間とともに引いていきます[8]。ただし、まれに元に戻らない重い合併症もあります[8]。血管に入ってしまうと、皮膚の壊死や失明が起こった報告があります[1]。
場所でも差があります。頬・唇・口元は、ほうれい線に比べて、腫れやしこり、かたさが出やすかったと報告されています[8]。
自分に合うかは、診察で何を確かめる?
専門家グループは、病歴をしっかり聞いて、説明に納得してもらうことを勧めています[7]。少なくとも施術の1週間前には、避けたい薬や食べ物を確認しておくよう求めています[7]。
診察では、気になる場所がヒアルロン酸で届く悩みかどうか、持病や飲んでいる薬、最近と今後の歯の治療、アレルギーの有無を伝えてください。ここは記事だけでは判断できない部分です。
- 1日本美容外科学会会報 特別号(第44巻 Supplement). CQ2-2-1 顔のシワ治療に対するヒアルロン酸製剤注入(推奨度2・弱く推奨)/CQ3-1-1 乳房増大に対するヒアルロン酸製剤注入(推奨度1・行わないことを強く推奨).
- 2Tapsale P, Türsen B, Türsen Ü. Off label uses of hyaluronic acid fillers: A review. Dermatologic Therapy. 2022. doi:10.1111/dth.15876
- 3Swaminathan V. Effectiveness, safety, and versatility of hyaluronic acid dermal filler in patients with reduced midface volume, chin retrusion, and/or loss of jawline contour: A prospective case series study with 12-month follow-up. JPRAS Open. 2025. doi:10.1016/j.jpra.2025.06.018
- 4Hong GW, Wan J, Yoon SE, Wong S, Yi KH. Conditions to Consider When Choosing Fillers. Journal of Cosmetic Dermatology. 2025. doi:10.1111/jocd.70075
- 5Rayess HM, Svider PF, Hanba C, Patel VS, DeJoseph LM, Carron M. A Cross-sectional Analysis of Adverse Events and Litigation for Injectable Fillers. JAMA Facial Plastic Surgery. 2018. doi:10.1001/jamafacial.2017.1888
- 6Ruiz N, Lopez RM, Marques R, Fontenete S. Clinical Outcomes and Safety Profile of a Dextranomer–Hyaluronic Acid Hybrid Filler: A Case Series Analysis. Journal of Cosmetic Dermatology. 2025. doi:10.1111/jocd.16653
- 7Baranska-Rybak W, Lajo-Plaza JV, Walker L, Alizadeh N. Late-Onset Reactions after Hyaluronic Acid Dermal Fillers: A Consensus Recommendation on Etiology, Prevention and Management. Dermatology and Therapy. 2024. doi:10.1007/s13555-024-01202-3
- 8Colon J, Mirkin S, Hardigan PC, Elias MJ, Jacobs RJ. Adverse Events Reported From Hyaluronic Acid Dermal Filler Injections to the Facial Region: A Systematic Review and Meta-Analysis. Cureus. 2023. doi:10.7759/cureus.38286